藍染の木綿の着物、大人のあそび方、愉しみ方。

藍染の木綿の着物、大人のあそび方、愉しみ方。

誰の目にとまることなく数十年。
蔵の奥でひっそり眠っていたのは、Ｎ様のご主人様が１０代の頃にお召しになっていた藍染の木綿の着物でした。震災で傷んでしまった土蔵の中を見ていた時、たとう紙にもくるまれず、桐のタンスの中にポンと無造作にしまわれていたのを見つけたのだそう です。長い年月を経た本藍染の手織りの木綿の着物は、変色もなく素晴らしい藍色でした。温度変化の少ない土蔵で、着物の保管に最適な桐のタンスに保管されていたという事が、素晴らしい効果があると言う事なのだと思います。
嘉月に御持ち込み頂いた時は、衿汚れやくすんだ色合いや長年の臭いなどありましたが、質のよい素晴らしい手触りの木綿でしたのでお仕立て直しをご提案させていただきました。

眠っていた着物を手仕事でお仕立て直しに

嘉月のお仕立ては「山形の栗原さん」と「東京の大高さん」にお願いしています。
今回は栗原さんにお願いしました。実は栗原さんは嘉月にお着付けにいらして下さっ たお客様のお母様です。お客様からお仕立てのお仕事をしていらっしゃるお母様のお話を伺いお願するようになったのです。嘉月の仕事では、日々多くのご縁を感じておりますが、栗原さんとの出会いも驚くようなご縁の一つです。
栗原さんは東京の和裁学校を出られた後、山形に戻られてからずっと、ご結婚や子育ての間も６５歳の現在も、第１線でお仕立てを続けていらっしゃいます。
小さな体でこつこつとお着物を縫って下さいますが、そのお仕事は素晴らしく、初めて栗原さんの“ぐし縫い”を拝見した時は、栗原さんの縫った留袖を着たかったと、すでに持っていることを残念に思ったものです。１枚１枚の着物をどうやって素敵に仕立てるかを常に考え労力を惜しまない手仕事には感じ入ります。
日本には良心的にお仕事をしてくださる職人さんががんばっていらっしゃいます。
そのような方たちにお仕事をお願いできるよう微力ながら嘉月もがんばっております。
今回のお仕立て直しは２７,５００円(解き、洗い張り、仕立て直し代、税込)でした。

藍はツヤを取り戻し、大人の単衣に

袖はまるく、女性らしさを。
足りなかった身丈は居敷当を胴廻に足して
衿裏と居敷当は新しい白布に

元の着物は男性用でしたので、身丈が足りませんでしたが、同じ布の居敷当の状態がよかったので、着ると見えなくなる胴廻りの部分にそれを剥いでぴったりの寸法にすることができました。
衿裏と居敷当は新しい白布で気持ち良くなりました。シンプルな男性用の生地でしたのでお袖はまあるく元禄にしてくださったので女性らしさがでて新鮮です。
Ｎ様が驚かれたのは、洗い張り後の藍の発色です。以前よりツヤが出て、蔵で見つけられた状態から見違えるようでした。
着物はこうして何代も引き継がれていくのですね。ご主人様は結城の近くのご出身で、この木綿の着物もおそらく素晴らしいお品物だと推測できます。藍の美しさは年月を超えても衰えるどころか、より肌に馴染みが良くなっていくことを知りました。

大人になったから愉しめる着物の遊び

今回お仕立て直しをして再び袖を通すことになったシンプルで渋い蚊絣の木綿の着物は、お召しになる方の内面がより現れるようです。
ご主人様の転勤により長い海外生活を経験しながら、家事、育児、外でのお仕事をこなしてこられたＮ様は、とても社交的で、ユーモアがあり、凛と背筋の伸びた素敵な女性です。
今回は、若葉の薫る６月にふさわしく、藍染め木綿の着物に、さわやかにオフホワイトの博多帯をコーデイネイト致しました。涼しげで品があり、単衣の木綿の着物ですが、おしゃれ着として様々な場所にお召しいただけると思います。
冬に向かってはおしゃれな染め帯やざっくりとした織りの八寸帯などを合わせられても素敵ですね。
蔵の奥で数十年眠っていたこのお着物。ご主人様がお若い頃着ていたことが想像できないほど奥様にピッタリに生まれ変わり、今のＮ様に大変お似合いでした。
これこそ年齢を重ねたからこそ出来る着物の愉しみですね。

ご友人のＫ様と共に
藍の着物にパリッと効いた白の博多帯。
花の織り柄が入っています。
帯揚げは大人っぽくブルーを合わせました。
着物は発想一つで新しい魅力が
次々と現れます。
昨年麻着物に合わせてご購入いただいたお品ですが、
今回もピッタリでした。
前坪の赤が大人可愛く効いています

 

お着付け嘉月では、お手持ちの着物や帯を上手に組合わせる相談も承っております。タンスに眠っている着物や、ご親戚などから譲り受けたお品など、どうぞお気軽にご相談ください。

JR・小田急・江ノ電「藤沢」駅より徒歩4分。
着付け後の移動も苦にならない便利な立地です。
日本料理　若狭さん前、新築のアパートの2階になります。